2009年01月05日

アメリカ発の信用恐慌編そのA


秀さんが前から気になっていたサブプライム問題発生から続く世界的な金融信用収縮に至った経過がこの論文から秀さんのアホな頭でも少しは理解できましたので、非常に長い転載ですが2編に分けて(文字数オーバーのため)下記に添付します。

興味のない方は、無視して下さいな。

この文章は転載無料と言うことですので、誠に有り難いですわ。
また内容も非常に分かりやすく検証も十分だと思いますね。

秀さん的には最後の 筆者の 「後記」 が心に沁みてこの方のお人柄がしのばれます。

 
転載そのA

***************************

9.信用が創造されるプロセス

さて・・・ここからです。ここまでは、銀行は、何ら信用創造をしていません。預金額に見あう3兆円の融資と、2兆円の有価証券を買っただけです。資産と負債は、見合っています。

普通の人の銀行への理解は、ここで止まっています。

【合計B/Sで見る】
しかし、ひとつの銀行のB/Sではなく、他の銀行が連鎖した全銀行の合計B/Sを見れば、そうではない。ここに、驚愕の構造がある。マネーは、無から生まれます。その無が、信用です。

3段階:融資や証券買いの結果はどうなるか?

前記のようにA銀行が、3兆円を企業に貸すとします。借りた3兆円を使い企業は投資をする。単純にするため、全部を工場に設備投資したとします。

企業からは、工場を作った建設会社に3兆円が支払われます。その3兆円は、建設会社の賃金、資材購入、利益になる。3兆円は、個人と他の会社をめぐって行きます。個人は賃金を、建設会社は売上を、BC.....銀行に預けます。というより、売上は口座に振り込まれ預金になる。

2兆円の証券の購入も同じです。銀行に証券を売って得た、誰かの現金2兆円は、また、どこかの別の銀行に預金されます。

現金で、会社や個人の金庫に残す分は、今週の支払い分くらいです。個人もカードで買い物するので、現金は要らない。預金しておけばいい。

つまり・・・〔A銀行が企業に貸した3兆円+有価証券を買った2兆円〕は、B銀行かC銀行、あるいは他の銀行の預金になり、無限連鎖で増えます。(数学的な無限等比級数)

中央銀行は、新たな5兆円を紙幣として印刷し、増やしたわけではない。誰も、増やしていません。しかし、ABC・・・の銀行を合計した預金では、A銀行の融資3兆円+有価証券購入2兆円分が増えたことになる。

以上が、銀行システムの連鎖(マネーのチェーン)による5兆円の信用創造の秘密です。

B銀行に、預金が集まったとします。B銀行のB/Sは、以下のように資産と負債が、同額、増えます。

【資産】        【負債】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
現金  5兆円    預金 5兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

このB銀行も、負債の預金には、金利を払わねばならない。現金のままもっていても、金利はつかない。B銀行は、即座に、5兆円分の有利子負債を返すか、企業への融資、証券購入、国債購入をします。

口座の5兆円を、どこかの企業に融資したとします。企業が借りた5兆円は、前記の無限プロセスを経て、結局、ABC・・・のどこかの銀行の預金になります。

最初のA銀行の融資3兆円、有価証券購入の2兆円が、企業・個人・銀行をめぐりめぐって、5兆円+5兆円+5兆円・・・・というように、無限に、銀行システム全体で、増えます。

これが、銀行の連鎖ネットワークによる、無からの信用創造です。

ゼロ金利策は、信用の無限連鎖を強化するものです。預金への利払いコストがゼロですから、企業や銀行は、低い利回りの投資や証券購入ができるからです。

米国の五大投資銀行(筆頭ゴールドマンサックス)は、低い金利で借り、高い利回りのものに投資していた。そのため、純負債で350兆円(08年末推計:対外総負債2000兆円:対外資産1650兆円)を抱える米国が、逆に、投資利益を出していたのです。

今、金融機関はシグナルであるデジタルマネーが、世界を瞬時に動くことができるネットワークシステムの中にあります。

・世界のほぼ10年間の低金利、
・紙幣が化けたマネーのデジタル化、コンピュータネットが、世界バブルを生んだとも言えます。

【記憶】
20年前、情報システムについて原稿と企画を書き、早朝に、ひとり眠るとき、毎日、サミュエルソンの分厚い『経済学(岩波書店)』を読んだ。10時間書くと、脳が熱く、くしゃくしゃになる感じがあるので、古典を読むのは、清涼剤です。

「進展する金融のコンピュータ化は、今までの金融を根底から変えるはずだ。どういう帰結になるかは、分からない。」とあったのが気がかりで折に触れ考えていました。結果は、過剰な信用創造によるバブルと、その後の信用恐慌でした。今はっきり分かった。

10.支払い準備率と信用創造

【準備率の秘密】
ここで例えば5%の「支払い準備率」を言う必要があります。5兆円の預金を預かったとき、政府規制で、銀行はその5%(2500億円)を支払い準備として、中央銀行の当座に預けるか、手持ち現金(他の銀行への預金)に残さねばならない。

銀行システム全体の信用創造は、5兆円÷(10.95)=100兆円が最大になります。4%なら125兆円です。

5兆円+5兆円×0.955兆円×0.952乗+5兆円×0.953乗+5兆円×0.954乗・・・・・=5兆円÷(10.95)=100兆円

(注)連鎖の途中で、5%以上を残す銀行が出ます。上記計算は、5%の準備率での最大信用の創造額です。

銀行の連鎖のシステムで、最初のA銀行への預金5兆円が、総額で100兆円の信用を創造するのですから、すごい。

紙幣ではない。預金のデジタル数字です。そしてその預金は、企業や個人への融資と、国債を含む有価証券の購入になる。この銀行システムが、現代社会に、普通の仕組みとして組み込まれています。

【バブルとバブル崩壊が宿痾になった】
以上から、投機とバブル経済を生む過剰な信用創造は、不況期に金利をゼロに向かい下げるので、現代社会の宿痾(しゅくあ)といっていいのです。過剰になった信用で、過剰な投資と消費が行われる。

返せない負債の極点付近で、銀行信用、株信用、不動産のバブルが同時崩壊し、信用恐慌が起こる。

【日銀のゼロ金利と量的緩和が果たしたこと】
世界の銀行システムの連鎖による、無からの信用創造(=マネー創造)の構造を知れば、日銀がゼロ金利を発動した10年前から、ジャパンマネーが、1年で約40兆円主に米国に流出したことの、重い意味も了解できるはずです。

140兆円は、5%の支払い準備率ならその20倍、つまり800兆円の、世界の銀行システムでの信用創造、つまり預金を生む。

3%のスプレッドで動く】
国内をゼロ金利にすれば、マネーは3%以上のスプレッド(利幅)の利を求め、当然、より金利の高い海外に、資本逃避(キャピタルフライト)する。90年代以後の米国は、かつて日本より、ほぼいつも3%は金利が高かった。(注)今FRBはゼロ金利策。米ドルが売られることを意味します。

金利は、貸し付け、証券、株の投資の、利回り率も決めます。

【世界の資産バブル崩壊の遠因は、日銀だった】20064月、日銀はゼロ金利と量的緩和を停止します。31兆円もあった日銀当座預金(金融機関の預託マネー:06320日)を、3ヶ月の超短期で10兆円にまで、20兆円絞ったことが、世界の金融連鎖の中で20兆円×20倍=最大400兆円相当のマネーを抜くことにもつながった。

このため米国の不動産は、06年夏から下落地域が出た。

この策が、翌2007年になると、ファンドのキャリー・トレードの解消(返済)を手始めに、米国と世界の信用収縮を生み、世界の不動産バブルを崩壊させた原因と見ています。

残念ですが、日銀の頭脳には、そこまでの金融の想像力はなかった。(注)キャリートレード:金利の低い通貨で借り、金利の高い通貨の証券を買うこと。

日本の、800兆円の預金を中心にした個人金融資産は、世界の鯨のように、巨額です。それが、規制が緩くなった、世界の金融連鎖のチェーンで更に膨らんだ。

2000年はほぼゼロで、年々大きくなり、$62兆になった保険商品CDS(債務保証保険:07年末)も、金融機関が貸したり、あるいは社債、住宅証券を買うリスク感を減らしていたのです。

普通なら売れない、回収に無理があるサブプライムローンの、信用度がジャンク(くず)でも、回収を保証するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を掛ければ、額面償還と利払いをAIG等が保証するAAA証券に変わるからです。

回収保険を売ったAIG等は、保証料をプレミアムとして受け取り、史上最高の利益を出していた。2008年半ばまで、世界の金融は、金融保険のCDSCDOを使って、ノンリスク金融とされた。信用バブルは、そのため、一層、膨らんだ。

言い換えれば、金融(=貸し付けと証券購入)につきものの、リスクを回収保険で消したことが人々のリスク感を鈍らせ、ファイナンスが極点まで行ってしまった。これが今回の金融危機を、信用恐慌に至らせた原因です。

あらゆる保険は、リスク率が想定範囲のときだけ成り立つ。計算を誤れば、全体が破綻します。それが、2007年から起こった。

(注)風船(信用=マネー)が膨らみきれば、極点での爆発は大きく悲惨です。日本のゼロ金利での世界の信用膨張を、海を超えた遠因とする破裂、つまり突然の世界恐慌は、必然だったのですが、それが、若干弱いものになったとも言えます。

信用恐慌によるバブル崩壊は、突然、返せない負債の変曲点(=臨界点)を超えたとき襲う。信用恐慌の前週まで、経済は、抜ける青空の、絶頂です。ドバイには、地上1000メートルのビルも企画させた。今、工事停止状態。

今回の恐慌は、以上のように、世界が初めて経験する21世紀の、デジタルマネーと保険料率を計算する金融工学が生んだ乗数金融型の信用恐慌です。姉歯事件の、耐震偽装に似ています。

FRB議長のグリーンスパンが、本当は当事者責任の回避の目的で言った、「100年に一度」ではない。デジタルマネーやCDSは新しいからです。

90年代には、CDSはなかった。1929年にもなかった。新聞や論者は、枕詞に100年に1度と言う。これは、もうやめたほうがいい。対策を間違えるからです。

11.銀行は負債額が資産額

ここで、信用創造する銀行のチェーン・システムを、注意深く見れば、最初の5兆円から、100兆円(20倍の信用:マネー)を創造した銀行システムの全体が、銀行の、自分のものではない国民から預かったマネーをもとに、社会の富のほとんどを所有していることにも気がつきます。

銀行は、ぺーパーマネーを貸す代わりに、普通、評価額から20%〜30%くらいの欠け目を見た財貨を担保にとるからです。

銀行にとっては負債の預金は、
・銀行システムを媒介に、
・金融機関の資産である貸付金、
・有価証券の所有、株の所有になって、銀行が所有します。

企業やローンをもつ世帯を生かすも殺すも、銀行や金融機関の思惑によるものになる。

その上、金融機関が損をし、破産状態になれば、米国や日本のように、国家が国債を刷り(事実上無償で)貸し付け、あるいは資本注入し救います。

その金融株主の、世界の頂点が、網の目のようなネットワーク構造をもち、金融機関の最終資本の多くをもつ、(国際金融マフィアである)ロスチャイルド家や、ロックフェラー財閥、あるいは国家とは言いませんが、まぁ、たどればそういった仕組みです。

なんだか・・・社会が壮大なフィクションに思えます。大元は、近代社会が、個人や企業が所有するマネーのほぼ全額を銀行へ預金にしているからです。資本主義は、デジタルマネーとネットワーク型の金融資本よってそこまで行き着いてしまった。

消費財デフレと資産インフレの同居

19世紀型の、単純な一国資本主義では、過剰な信用創造(マネーの増加)は、インフレになった。しかし、2000年代は、逆に、消費財〔商品〕のデフレ〔価格下落〕の時代でした。

理由は、中国と旧共産圏(東欧)及びアジアが、資本と技術輸入によって、電子部品を使う高度な商品まで、先進国の101以下の低い労務費で作り、低い価格で大量に輸出するからです。

最近、望みの一眼レフ(ニコンD90)を買いました。中級クラスですが、凄い性能。ボディ価格は、8万円。シグマ製のレンズが約4万円。ニコンは、日本光学。日本製かと思っていたのにタイ製でした。国際分業と技術移転が、高度製品の領域まで来たかと、感慨深い。

こうしたことのため、1980年代までのようには、先進国のワーカー賃金が上がらない。賃金が上がらないと、購買力は増えません。

購買力が増えないと消費財のインフレは、なかなか起こらない。米国は違っていました。世帯が1年に100兆円分借金を増やし商品を買ったからです。

代わりに、世界では資産インフレを超えた資産バブルが、起こった。不動産は、後発国で作り、輸出することはできないからです。

次は、株による信用創造です。金融機関だけが無から信用創造するのではない。株も、将来利益を現在価値に還元するメカニズムで、大きなマネーの元になる信用を、創造します。

12.株も信用創造

200710月の世界の株価時価総額は$63兆とピークでした。世界のGDPが$60兆ですからそれを超えています。

078.19に、欧州で始まったサブプライム・ショックは、バーナンキが言ったように、数十兆の損としか見られていませんでした。低金利と、前記の金融の連鎖による巨額な信用創造(実質的なマネーの増加)への想像力が、欠落していたからです。

株にも、銀行チェーンのような信用創造のメカニズムが組み込まれています。

株の理論価格

株価の理論価格は、
・次年度からの企業予想利益に、
・各年度のリスク率を掛け、
・期待長期金利で割ったものです。
(正確には、ファイナンス論でこうだとされる)

企業の、ほぼ確定した次年度利益(税引き後純益)を10億円と仮定します。翌年の、利益予想のリスク率を10%とします。そうすると、企業の期待純益は以下になる。

10億円+10億円×0.910億円×0.92乗+10億円×0.93乗+10億円×0.94乗・・・・=10億円÷(1-0.9)=90億円

これが、期待純益です。そして各年度の期待純益を長期金利(複利)で割る。現在の長期金利が2%、金利の変動リスク率を1%の幅(50%)とします。これを加味することは、各年度の期待純益に、0.97の各年度の累乗を掛けたことと同じです。

10億円+9億円×0.978.1億円×0.972乗+7.3億円×0.973乗+6.6億円×0.974乗・・・
80億円=ファイナンス論の理論価値

80億円の理論価値と見なされる。予想PER(=株価の理論時価総額80億円/次期純益10億円)では、8倍と低い。(注)これが今の理論価格水準でしょうか。

1年前の07年秋の時点では、世界の主要株の実績PERは、15倍(先進国)から60倍(中国等の新興国)でした。理由は、世界経済の5%成長で、次年度より高い企業純益が、共同幻想で期待されていたからです。

1年で20%利益が増えると仮定すれば、以下のようになります。予想のリスクを10%とします。各年度の期待純益は、以下のように、増えます。

10億円+10億円×1.110億円×1.12乗+10億円×1.13乗+10億円×1.14乗・・・=純益は無限大

利益の無限大は、どう見ても行き過ぎです。大ざっぱに、将来15年分だけを、見るとする。理論株価は、実に、大ざっぱなものです。

これを、将来利益の割引現在価値(NPV: Net  Present Value)とも言う。賭のようなものですが、経済が成長する国では、企業純益はそれ以上に上がることが多いので、説得性はもつ。

10億円+11億円+12億円+13億円+15億円+16億円+18億円+20億円+21億円+24億円+26億円+29億円+31億円+35億円+38億円=319億円です。

これらの期待純益を、各年度の期待長期金利(複利)と金利の変動リスクで割引きます。金利が低いと、次第に無視できる要素になる。理論株価は、300億円に近づきます。結果はPER30倍です。先進国でも利益の期待成長率が高い企業は、PER20倍〜60倍にもなる。

概略を言えば、「21世紀の世界経済は成長期に入った。特に、高度成長をする新興国の企業利益は大きくなる。BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)はPER20倍でも買いだ。」という論を、投資銀行1位のゴールドマンサックスは出した。

BRICsは、2000年代初頭に、ゴールドマンが証券商品を売るために作った言葉です。

株価の上昇は、その株を担保に、買える株を増やします。つまり、レバレッジでの投資が起こる。ここでも「信用が膨らむ」。つまり社会の、担保として利用できるマネーは増える。

分からないのが本質の未来の利益を分かるかのようにリスク率も加えて確率計算し担保にいれた。理論株価の根拠は、これしかない。

株式市場では、$64兆(5800兆円:0710月:$190円換算)のマネーが作られたと言っていい。今これらは、約40%〜50%下げています。

株の信用総額は、3000兆円近くが失われています。この損は、世界の不動産の下落損にも、匹敵する。比較すれば、日本のバブル崩壊は小さかった。

2000年代が、金融と株での、過剰な信用創造をベースに、不動産と株価の資産価格を極点まで押し上げていたということを想定すれば、PER30倍は、いかにも変と分かったはずですが、多くの人はそう思っていなかった。

企業利益は史上最高で、世界経済は5%の高度成長、新興国は2桁成長と前提していたからです。

以上、本稿では、2007年までの過剰だった信用創造を解きました。次は、信用崩壊(=信用恐慌)後を、見極めねばなりません。原因を見なければ、正当な対策もない
 【後記:人の宝石】

歌姫と言われるMISIA(ミーシャ)は、ケニアの難民が住むスラムを訪
ねた。ノビテワという、13歳の少女に出会う。

病いで働けない父と、弟がいた。母は何年か前、病気に倒れた。病院
に行けず亡くなった。一家の収入は、ノビテワが時折の子守でもらう
1ドルだけだった。家族は、食べることができない日がある。

父と弟に食べさせるものがないと思うと、不安が襲うと言う。学校に
行って勉強し、いい仕事に就きたいという。目が、大きかった。

ミーシャは、将来、何になりたいのかと訊く。
「勉強して、看護師になり、苦しむ人を、助けたい。」

恥ずかしそうに言った。苦しむ人を、助けたい・・・なぜ、こう思う
ことができるのか。ホームレスすら貴族に見える環境で、最初に、な
ぜ人を助けると考えることができるのか。現在へ恨みではない。明日
への希望だった。難民キャンプに学校はなかった。アフリカとケニア
の各地では、凄惨な部族闘争が続いている。

食べるものを稼ぎたい、ではない。
願いは、人を助けたい。この言葉を、心に刻む。
心が、揺さぶられ、共感は感動になった。

見たのは、TVによくある、お涙頂戴の番組だったかもしれない。しか
し十分に思えた。ゴッホの複製画が感興を惹起するように、作り物で
も伝わるものはある。

1年後、ミーシャは、ノビテワに会いに行く。別の場所に、住んでいた。
トタン屋根の、青い波板シートで囲んだ粗末な学校があった。希望
の最初の段階は、叶っていた。背が伸び、ミーシャを超えていた。所
作と声は、変わらない。ミーシャは、また希望を訊く。

「医者になって、苦しむ人を助けたい。」

学校に行くには、110万円がいると言う。ミーシャは、14歳になった
ノビテワに提案する。皆で協力し、バッグやアクセサリーを作ろう。
それを送ってもらい、ミーシャのコンサートで売る。続けられる仕事
を、作る。

ノビテワの、苦しむ人を助けるという希望が、ミーシャを駆り立てて
いた。その言葉が、医者の学校に行く手段を、作りつつある。

私は自問した。人は目標をもつことができる。高い目標が、人や企業
を作ると断言できる。ノビテワが医者になれるかどうか、わからない。
しかし、ノビテワの動機は、人を助けることで、人への貢献だった。

目標が彼女をひっぱるかぎり、ノビテワの将来は、他の仕事であって
も、すばらしいものになると予感した。8年後に、医者になり難民キャ
ンプで昼夜働き、ミーシャを駆り立てたように周囲を動かす気品を備
えたノビテワがいるかもしれない。いや、きっと、いる。イマジネー
ションがそれを与える。

何もないところで、人は希望をもてる。共感させる希望は、周囲を動
かす。そして気品を与える。我欲を超える気品は、人を動かす。

可能性は高い。人は、実現を信じることができる。願えば叶うのでは
ない。願い続ける強さと、強いゆえの持続が、自分を鼓舞し、人にも
伝わって将来を決めるのだろう。(前号では、強化学習の方法を述べ
ました)

未来は、ない。物理的には、いつも、現在しかない。
しかし人は未来を予見し、予見の実現を、信じることもできる。

自分は、どんな希望や目標をもてるか。人は、過去と今の環境に規定
されている。自分の歴史から、自由ではない。しかし、明日へ向かえ
ば自由だ。サルトルから学んだ。未来への投企(projet:プロジェ)
と言った。

人を、高みへを引っ張るのは、目標に違いない。医者になる目標は、
ノビテワにとって高い。難しくも思える。しかし希望だ。万一医者な
れなくても、キャンプの困っている人を助ける仕事なら100%できる。
医者という資格も、結果にすぎない。

自問しています。あらゆる仕事の原初的な鍵は、人に貢献するという
希望だ。自分を奉仕の立場に置く。そうすれば希望の実現も見える。

新年にあたり心に触れたノビテワの言葉を、再び伝えます。

「勉強し、医者になって、苦しむ人を、助けたい。」

ノビテワには、病院に行くお金がなく幼少の子供2人と病の夫を残し、
苦しんで死んだ母の映像が刻まれているはずです。

母は、惨絶に死んだだけではない。すばらしいものを遺した。困って
いるのは家族を支える14歳の自分のはずなのに、人を助けることを、
自分のことより先に考えることができる。これ以上の教育は、ない。
教育は学校と教科書ではない。それは、知識に過ぎない。コアは、人
の生き方でしょう。寺子屋は、先人の、人の役に立つ生き方や、徳を
繰り返し暗記させた。

事業や仕事も、顧客という人間への貢献であるはずです。これこそが、
仕事の始原になる。収入や利益は、貢献の結果に過ぎない。

利益は目的ではない。貢献することが、事業の目的であるべきものの
はずです。貢献なら、誰にとっても、今日からできる。ここに、あら
ゆることの突破口がある。自分は、これを強く持続し願えるか

posted by 秀さん at 00:25| ハノイ | Comment(5) | TrackBack(0) | 番外編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初コメですo(〃^▽^〃)o
なかなか興味津々です( ̄m ̄〃)
また覗きにきますね♪
Posted by ゆうきん at 2009年01月05日 21:02
「後記」はかなりグっときました。
筆者さんの仰りたいことはもちろんのこと、ノビテワさんの状況に自分の若かりし頃を久々に思い出してしまい、2重にグっときてしまいました。
看護師を志して、看護科のある高校に合格した矢先に母が癌に侵されていることがわかり、即入院。受かった高校が隣の県で遠方のため、実家を離れての寮生活。しかし母と自炊している父と弟が気になってしょうがなく、転校を決意し、看護師になることをきっぱりとあきらめ帰郷。毎日学校の帰りにスーパーへ寄りご飯の仕度。母のお見舞いと看病。ついに癌が全身転移し、私が高2のとき死亡。それからも家事をなんとかこなしながら青春を過ごしました。
母親の死をきっかけ(たぶん)に看護師または医者になろうとするノビテワさんと、母親の病にまつわる事情で看護師をあきらめた私では真逆だとはおもいますが。。。
私事をつらつらと述べてしまい恐縮です。
秀さんの奥様も癌でお亡くなりになっているのを過去の記事で知っておりましたので、ついつい書いてしまいました。
お許しください。
Posted by mame at 2009年01月05日 22:45
ゆうきんさん 初めましてどうぞ宜しくです

人の書いた長い論文を張り付けるとは どうもいけませんねぇ。
でも、非常に分り易い名文だと思います。

コメント有難うございました。
Posted by 秀 at 2009年01月06日 03:23
mameさん どうもです

人の死は衝撃を与えますねぇ。
まさかそんなことが起こるとは普段は考えませんので・・・

悔いのない青春時代を過ごされたと思いますよ。お母様もきっと天国で喜んでいると思います。

生きている者は 力の限り生を全うするのが
勤めだと思っています。

コメント有難うございます。
Posted by 秀 at 2009年01月06日 03:29
事業や仕事も、顧客という人間への貢献であるはずです。これこそが、
仕事の始原になる。収入や利益は、貢献の結果に過ぎない。]
・・・この言葉にぐっと来ます。
私は以前から「企業の目的は利益追求だけではない、その活動が人間の幸せにつながらないとダメだ。」と思っています。
利益追求だけが企業活動だとなってしまってる今の状況はもう見直すべきでしょう。
そうでないと日本の未来はないと思います。
Posted by nihonngoyaroo at 2009年01月06日 23:20
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