吉田繁治さんのビジネス知識源を読んで、なるほど!
と思った部分がありましたので、いつものように下記に転載するのですが
ここ20年間日本が低迷している原因のひとつを分かりやすく
生産現場からみた考察をしています。
この人は本当に頭の良い方だと思いますわ。難しいことを分かりやすく文章で表すのはかなりの能力が必要ですねぇ。それを秀さんのようなアホにも噛み砕いて話をしてくれるので助かりますわ。
しかし・・・最近ベトナムの話題はないわ、転載記事ばかりで手を抜いているなぁ
と少しは反省しております。すまんこってす!
でもですね、この記事は長いですが非常の為になる記事だと思いますよ。
是非、一読して見てくださいな。
以下転載開始・・・・・・・・・・・
110120 ビジネス知識:後半部より
■4.小売業の大きな失敗の事例 【Kマートの誤り】
1980年代まで、破竹の勢いで利益を出し店舗数を増やして、世界ナンバーワンになっていたKマート(年商4兆円)で起こったことも、失敗工場の事例と同じです。
1980年代はウォルマートが登場しました。店舗数と売上でトップを走るKマートも、ウォルマートの店舗の15%と低い店舗コスト(設備関連費+人件費+在庫コスト)に、対抗せねばならなかった。
商品戦略として、Kマートのバイヤーは、仕入れ価格を下げるため、以下のような大量仕入を行ったのです。 「このPB商品は、今、1回で平均1万個の発注なので、300円で卸しています。2万個の発注を戴くと、工場がフル稼働しトラックも満車で、お宅の倉庫(DC)に、運ぶことができます。このため、250円で卸すことができます。御社の店頭価格は400円です。御社の粗利益率は、今25%(100円)ですが、これが37.5%(150円)に上がるでしょう・・・」
利益に苦しんでいたバイヤーは、ベンダーから提案があった二万個の大量発注を受け入れます。
このため倉庫には、KマートのPB商品(ブルー・レイと言った)が満載されます。
当然に、店頭にも、大量陳列がされます。 事実、1990年代のKマートのメイン通路には、安く大量仕入されたPB商品が、いつも天井まで満載されていました。売り場の品目数は少なく、明らかに、行き過ぎでした。
●小売業の損益計算でも、在庫は経費ではない。売れ残った在庫がどんなに膨らんでも、経費ではない。そのため、原価の低い商品を安く仕入れれば、倉庫と店頭で30%が売れ残っても、上記で言えば売れた分が売れたと仮想した、37.5%の粗利益があるように見えるのです。(商業簿記の欠陥)
▼店舗の、キャッシュ・フローの利益と、商業簿記の利益の違い 本当の利益計算は、以下のように、キャッシュ・フローで見なければならない。
時系列で見ます。250円で仕入れたものを2万個、400円で売る予定ですから、見込みの粗利益率は[150円(値入額)÷売価400円=37.5%]です。 (注)キャッシュ・フローでは、売上収入と、仕入および経費を現金で計算します。
商業簿記では、仕入で増えた在庫は経費でなく(資産勘定であり)、売れた分の仕入原価だけが、経費になります。
このため商品在庫が増えても、利益が出たように見えるのです。
工業簿記での部品在庫も、生産に使われたとき初めて製造原価に入れます。
部品在庫が増えても、経費にはならない。
(1)2万個の仕入時点=250円×2万個の在庫=500万円の赤字 売上はまだないので、仕入原価500万円が費用になります。
(2)店舗で5000個売れた時点での、キャッシュ・フロー利益 =売上(400円×0.5万個)×0.375−在庫250円×1.5万個 =実現粗利益75万円−375万円の在庫 =300万円の赤字 (注)1ヶ月で5000個売れると、在庫が1.5万個残っていても、商業簿記では[売上200万円×粗利益率37.5%=75万円]の粗利益額が生じたように計算されます。
キャッフローでは300万円の赤字でも、店舗の損益計算では利益が出たように見える錯覚が起こるのです。
担当バイヤーは、つかの間の喜びを味わうかもしれません。2万個の大量発注で、25%だった粗利益率が37.5%に上がって、最初の1ヶ月は「よくやった、利益が改善した」と経営者もバイヤーも喜ぶからです。他のバイヤーも見習って、大量仕入に奔走するでしょう。これが90年代のKマートでした。漫画のようです。 ・・・・・・以下1部省略します。
( ●バイヤーや工場長(あるいは部門管理者)は、会社が情報システムを作って、在庫や不稼働のコストを含むキャッシュ・フローで損益を計算し、それを業務責任にする管理の仕組みを作っておかないと、量産工場やKマートのような誤りが、どの会社でも生じるでしょう。 【ついに破産】こうしたことを繰り返し、MBAのエリートが多く勤め、当時は世界最大のKマートは、2002年に倒産します。今は、シアーズに併合されています。Kマートの、本部が作る経営計画書はすばらしかった。それを実行する現場業務がダメだったのです。
●世界最大の自動車会社GMの倒産も、実は、販売が50%に急減したリーマンショック以後も、「工場での1台あたり製造原価を下げるため作りすぎた車の販促費と、大きな割引販売の負担」から、巨額赤字を出したことです。 GMの倒産前の粗利益は、販促費と割引の増加のため、ほぼ5%しかなかった。壮大な誤りを行った。(注)普通、自動車の粗利益は15%はあります。
以上のように説明すれば、「わかりきった失敗だ。」と誰もが思うでしょう。しかし、部門が複雑な、巨大エリート企業で実際に起こったことです。 今日も、「工業簿記と商業簿記がもっている、経費と期間利益計算の欠陥」に気がつかないと、実際にあちこちで起こっているでしょう。
【ロジスティクス】
●サプライ・チェーンのコストダウンの鍵は、リードタイムを短くした最適ロジスティスになります。サプライ・チェーンの具体型は、ロジスティクスと言ってもいい。
DELLの生産システムは、受注後に、アジアで1週間で組み立てる、ロジスティクス型生産です。「生産期間で1週間」というのは、今の全競争の、キーポイントかも知れません。 良く利用するアマゾンも、ゴルフ・ダイジェスト・オンラインも、インターネットでの注文後、ほぼ翌日に届くようにロジスティクスが短縮化しています。サプライ・チェーンが、できているからです。
■5.スルー・プット会計は、キャッシュ・フロー会計 サプライ・チェーンでは、伝統的な損益ではなく、キャッシュ・フロー計算したものを、利益とします。 これを、イスラエル人のエリアフ・ゴールドラットは、2000年ころにベストセラーになった『ザ・ゴール』で、敢えてわかりににく「スルー・プット会計」、つまり、「出力(=売上)と入力(仕入と経費)の差を計る会計と言っています。 (注)スルー・プットは、コンピュータにデータを入力し、プログラムで加工され、目的の出力データを出すまでの時間です。短いほど、高性能になる。 「ザ・ゴール(唯一の管理目標)」は、キャッシュ・フローの利益です。
ここから、工場の各工程を、最終販売に同調させる「制約理論(例えは、むかで競争)」という、工程管理の方法を導いています。 ゴールドラットは、1990年代に、(1)一貫スルー・プット会計の方法と、(2)原材料から販売の流通までを含む、異なる企業の、全工程の生産・仕入・在庫を同調させる「制約理論」を日本が知れば、競争する米欧の産業にとって、困ったことが起こると考えます。 (注)実は工業簿記や商業簿記が原価計算や利益計算では、経費と資産科目があり、税法も絡んで複雑です。現金の動きのキャッシュ・フロー会計は、スルー・プット会計と難しく言っても、内容は単純です。骨子は、収入と支出の家計簿だからです。貸借対照表は別になりますが・・・ この一貫サプライ・チェーンの方法を知れば、もともと80年代に、トヨタ式生産やタンピン管理という伝統的な[工場内サプライ・チェーン、店舗内サプライ・チェーン]の素地をもつ日本が、世界を征服するだろう。これは避ける。ゴールドラットは、そう考えていたのです。 (注)両社は、工場内や店舗内の、伝統的で「部分的なサプライ・チェーン」と言えるでしょう。
ここに問題があった。この解消が、両社を成長させるでしょう。小売業では、ウォルマートモデルです。
(1)トヨタでは、部品産業と膨大な下請け会社、
(2)IY堂とセブン・イレブンでは、卸と工場を含むコストを最小化するサプライ・チェーンが、あまり考慮されなかったからです。
これらが、原材料から製品の最終販売までの多段階を一貫するサプライ・チェーンの方法を知れば、怖いことになると、彼は考えます。 そのためゴールドラットは、日本企業が十分に弱って、(1)新たな「設備投資」と、(2)一貫サプライ・チェーンの構築のための「情報システム投資」を減らした2000年代にしか、日本語への翻訳を許さないとしていました。
日本の産業は、1980年代までは、設備投資が世界最高でした。これが、人的生産性を上げていました。 しかし1990年から現在に至るまで、日本企業の平均生産性は伸びるどころか、逆に減っています。このため1997年からは、世帯の平均所得は20%も減っています。年収400万円以下の世帯が、急増しています。 (注)1996年の平均世帯所得(平均家族2.6人)は661万円でした。2010年は推計で、530万円です。131万円(20%)も減っています。(国民生活基礎調査:厚労省) 若干大げさですが、2000年代の10年の事実を見れば、ゴールドラットが予想していたことが、首肯できます。
売上予想(または受注)、仕入、在庫、販売を最適に連鎖させるサプライ・チェーンでは、情報システムで、発注システムと在庫管理システムを作ればいいというのではない。(1)スルー・プット会計の方法が加わり、(2)管理方法の変革がなければならない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(1)業務の活動と、(2)部門のキャッシュ・フロー管理の仕組み作りが同時に必要で、(3)原材料・部品の源流から最終販売の、一貫性が必要です。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【身近に知ったキャッシュ・フロー経営】1月3日は、誘われて、初打ちでした。約10人の、クリーン・ルームの空調設備を設置するための、配管を作る工場をもつ経営者と一緒でした。帰りの車の中で、彼が言っていた。 「今はCADでの設計ですから、設計すれば、機械は自動的に動きます。CADの技術革新について行くのは、実に大変です。でも自分は多分臆病なので、入った売上と、「給料+経費+材料仕入」を払った後に、残ったお金の計算しか、信用しなかった。90%は頭に入っています。今月600万円が残れば、それを自分の所得と考えた。借金は怖いので、銀行が奨めても、必要最小限しかしませんでした。そのため、今も、吹けば飛ぶような零細企業です。周囲には、儲かると思い、借金で、不景気のときは過剰になる設備投資をし、潰れたところだらけです。」 (注)CAD:コンピュータ支援設計 これが、サプライチェ−ンが言う「素朴なキャッシュ・フロー経営」です。タンピンの管理の原型を作ったIY堂の会長、伊藤雅俊氏も似ています。 素朴(=単純)さが、いつも時代を拓く。経営法で、複雑なものは消えます。シアーズの企業再生戦略は、論理的にはよくできていたのですが、戦略要素が多岐にわたり、実に複雑でした。このため、現場は実行ができなかった。 【伊藤雅俊会長】「いちばん怖いのは、会社が大きくなって、バイヤーが在庫を怖がらないことです。そのためうちでは、売れたものをバラで仕入れるタンピン・カンリと、死に筋カットにした。」 実際に会いタンピン・カンリという発音を側で聞くと、懐かしい感じがしたのを憶えています。 (注)前述したように、ベンダーへの発注頻度を過度に増やし、入荷サイクルを短縮化することが多いタンピン・カンリには、・店舗の商品作業量と、・ベンダーの在庫、および納品コストを増やすという欠陥があります。生産コストも上げます。 営業利益を基準にみれば、店舗の商品作業を減らす最適な発注頻度と最適在庫がある。最近の経営で良く使われ最適(オプティマム)は、営業利益を最大化する商品作業と在庫を言います。 ●若干難しいのですが、これが、EOQ(経済発注量:Economical Ordering Quantity)の公式です。 (注)EOQ(ある部門の経済発注量)=[2×一定期間の売上予測数×(発注ロット当たりの商品作業費+ロット当たりの配送費を含む原価低下額)}÷{(発注ロット当たりの在庫コスト率%+ロット当たりの在庫リスクコスト率%)×仕入原価}]の平方根です。 この実際の計算法と利用は、事例を出し、雑誌『販売革新』(2008年6月と7月号)に、詳細に書いています。まだ利用はされていないでしょうね。この在庫管理シリーズは、12回分、連載しています。 このEOQの実現型が、店頭や卸の「売れ数予測に比例する在庫(=売れ数比例在庫)と最適発注頻度」です。これは、店舗におけるサプライ・チェーンの目標になるものです。 IY堂やセブン・イレブンも店舗のタンピン・カンリだけは、サプライ・チェーン全体(製造・卸・小売)の総コストと在庫を、最小化するスルー・プット会計ではない。 発注頻度を増やすタンピン・カンリだけでは、卸と製造の在庫、生産、物流コストを上げることがあるからです。 また、トヨタ式生産も、工場内では受注生産のサプライ・チェーンであっても、下請けの部品業者の見込み在庫と、即納のためのコストを増やしていることが多い。 生産と流通の一貫サプライ・チェーンとして、完全とは言えません。このため、2010年は、サプライ・チェーンの世界25位のランクにも入っていません。 下請けを含むCPFR(共同商品計画・予測・補充)に、不十分な点があったからです。以上を、哀しみます。
■6.ハイ・ブリッド化した製品の原価は、販売量が増えると加速度的に下がる ハイ・ブリッド(原義は混血・雑種)は、車ではガソリン・エンジン(内燃機関)と電機モーターの複合エンジンの車を言います。 一般的な意味では、「機能の複合化」を言います。今、電子製品に限らず、ほぼあらゆる商品が、複合化されています。 【価格が高い炊飯器】例えば、以前は電熱器のように単純だった炊飯器です。今は、米を炊きあげる過程での温度や蒸気圧力を、美味しいご飯が炊けるよう最適にコントロールする基本ソフトとアプリケーションが入っています。数万円と高いのですが、これは、研究開発と数百メガバイトのソフト開発のためです。 (注)実は高性能な炊飯器も、1機種の販売台数を10倍に増やせば、製造原価は、利益を上げる販売価格でも1万円付近に向かい下がるでしょう。複製ではゼロのソフト部分のコストが、大きいからです。しかし、お米の炊飯器は、ほぼ国内市場だけで、各メーカーの機種が多い。このため1機種の生産量が少なく、まだ高価格のままです。 掃除機にも、マイクロコインピュータが組み込まれています。車は、駆動系やブレーキ、および空調、ナビゲーション、音響等が、マイクロコンピュータの塊になっています。 次世代携帯電話(i-Phoneやアンドロイド)、i-Pad、i-Pod等は言うまでもない「ハイ・ブリッド製品」です。実に、われわれが使う商品は、多くがハイ・ブリッド化したのです。 音楽や映画の「i-Pod」を例に取ります。ソニーのウォークマンが世界を席巻していた時代(1980年代)は、音楽のソフト産業(カセットテープやCDの製作)と、それを再生するウォークマンは分離していました。 小型・精密・高品質ではあっても、ウォークマンは、過去の機械的な、高い精度の部品を集め、組み立てたものでした。 他方、白く、つるりとして操作ボタンもないi-Podは、日本が得意だった機械的な部品は、ハードディスクや液晶とICだけです。 SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)にすれば、ハードディスクも要らない。完全に、電子とソフト製品になっています。 肝心なのは、音楽ソフトのデータベースです。TVでも今、ネットテレビのApple TV登場しています。映画や番組がデータベース化される。書籍や雑誌も電子化されます。 重点は部品の精度だけではなく「ソフト・ウェア技術」になってしまった。複合化製品のすべてが、ソフト・ウェア技術です。 こうしたハイ・ブリッド化商品でのサプライ・チェーンでは、世界標準化の技術と、プログラミング技術、およびデータベースになっています。 日本の産業が遅れたのは、この点です。「アップルは発注量が1桁、2桁と多いのに(部品価格を)値切らない。国内の完成品メーカーとの交渉では、値下げの話ばかり。」 なぜこうしたことが起こるのか?
●アップルの製品の製造原価では、(1)ソフト・ウェアの開発コストが大きく、(2)機械的な部品が占める原価は、小さいからです。 機械が、ソフト化されたと言っていい。 例えば、あなたが、ほぼ毎日使っているコンピュータのキーボードは、機械的なものです。キーボードは、中国製の安い物は1500円くらいでしょう。 過去(1990年代)は、2万円以上していました。13分の1になった。ここが、2000年代の日本産業が、苦境に陥った根底です。 機械的な品質と耐久性がいい「モノ」を作っても、中国製のはるかに安いものと、「商品価値」での競争をしなければならない。商品価値=機能・品質÷価格です。13倍高い日本製のキーボードに、中国製の1500円の13倍の商品価値を認める顧客が、何人いるか? 極めて少ないでしょう。 (注)当方、キーボードを、力を込め激しく叩く時間が長いので、2万円の『RealForce106』という重い日本製を使っていますが、少数派でしょう。1500円ものは、数ヶ月で何度も壊れたからです。 アップルが部品メーカーに、発注が2桁増えても値下げを強くは要求しない理由は、製品の製造原価の中で、機械的な部品の占める割合が低いためです。一方で、ソフト・ウェアの開発コストは高い。 しかしソフト・ウェアは一個を開発すれば、無償で複製ができます。i-Podの開発に500億円のコスト(人件費)がかかっても、1億台売れば,1台あたりのソフト・コストは1億円分の1に下がり、500円です。2億台売れば、250円に下がる。 機械的な部品が多いものでは、最終製品の製造台数を2倍に増やしても、製造原価は10%も下がらないかもしれません。1/2のコストに下がることは、絶対にない。
●日本の産業が、例えばアップルに負けたのは、2000年代に進行した製品の原価構造の違いがあります。このため、アップルは機械的な部品の割引を強く要求しない。原価構成要素で、小さいからです。 世界の66億人市場で売るアップルのi-Pod、i-Pad、i-Phoneは、生産台数の桁が違います。 ソフト・コストの部分が多いので、1機種で売れる数が増えれば増えるほど、累乗的に利益は大きくなる。しかも、アップルの製品アイテム数は、100機種以下ではないかと思えるくらい少ない。初期生産は、顧客を1ヶ月も待たせるくらい、生産量は少ない。ムダのない生産システムです。
●他方、日本のメーカーは、1アイテムでは、少量しか売れない季節毎の新商品が多く、そのたびに設計を変え、金型をつくって、異なる部品を作り、組み立てています。 2000年代の、製造原価でソフト部分が増えた製品のハイ・ブリッド化に遅れたのです。
■7.アップルのグローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV) 「配送中も含めた店頭在庫や、日々の販売実績を、全アイテム、しかも一個ごとに把握している。当然に付属部品も。」 これがアップルのグローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)です。
●全店頭での在庫と販売予測から、1アイテム毎の生産計画を作り、その生産計画に基づいて、サプライ・チェーンの会社に、展開した部品やソフトを発注する。(注)CPFRによるMRP=部品要求プログラム:CPFR(共同商品計画、予測、補充) 日本のメーカーで、(1)世界の全店頭の在庫まで、一個ずつ把握し、(2)今日の店頭販売結果(POSデータ)をリアルタイムでつかんで、(3)その販売予測から、工場での生産計画と必要部品の発注を行っているメーカー(または販社、卸)が、あるでしょうか? あればご教授ください。その会社の業績は、急進しているはずです。
1990年代の後期に、米国のサプライ・チェーンのソフトのベンダーを訪ねたとき、「グローバル・ロジスティクス・システム(世界調達・在庫・販売管理システム)」と言い、数億円で売っていました。導入費用は、それ以上にかかっていましたが・・・今はもっと安いでしょう。 確かEXEテクノロジー社と言った。ラスベガスでのセミナーとその後の歓迎パーティに出席したのは、日本人では、NTTから数人のマネジャーと、当方のグループ2名でした。こうしたシステムを、今から作らないと、日本はダメになるのではないかと感じたのです。
(注)今、EXE社があるかどうかインターネットで調べても不明です。別の会社になっているかも知れません。日本支社長を知っていたので、EXEで、見込み客を前に講演したことがあります。 マイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマーがゲストスピーカーでした。アジアでは、ターバンを巻いたインド人と中国人が多かった。中国人と韓国人は、社員になっていました。 こうしたことが、今の中国と韓国産業(サムスンやLG)の、ロジスティクス・システムを作っています。韓国のLG電子が、ロジスティクスのシステムを模索していたのは、2000年代初頭でした。
経営者向けの講演依頼があったので記憶しています。(注)実行はしませんでしたが。 10年前です。国内のサプライ・チェーンもまだなのに、世界のコスト最適地から部品を調達し、製品は世界に販売する「グローバル・ロジスティクス・システム」は、時期が早いなとも思っていました。
しかし米国の、少なくとも(1)アップル、(2)P&G、(3)シスコシステム、(4)ウォルマート、(5)デルは、「グローバル・ロジスティクス・システム」に匹敵し、あるいは上回るシステムを構築しつつあったのです。 情報システムが利益になって稼働するには、数年の期間がかかります。今が、10年前の準備の華(大きな利益)でしょう。事業経営の戦略では、数年〜5年に渡る長期的な視野が必要です。
●情報とネットワークのシステムは、一夜で変えることができても、業務は人間が行い、販売網(販売店)の構築には数年の時間を要し、イノベーションの発現には時間がかかるからです。 組織と組織管理の方法も、変更しなければならない。スルー・プット会計も、です。そして、システムや設備投資は、導入当初は損失になって、利益が出ない。 (注)米国製造業の全体は衰微しましたが、日本の産業を超えるロジスティクス技術をもつ、世界的な成長企業群はあった。サプライ・チェーンの根幹の業務は、ロジスティクス(営業利益に対する最適発注量と最適物流量)です。 バブル崩壊期(1990年代〜2000年代初頭)の日本は、設備投資と情報システム投資を減らして抑制していました。 このため、事務計算のコボル等を使うメインフレームの、レガシー(古風)なシステムになっていた。1990年代は、NTTの規制のため、無線LANもなかった。これではムリです。今は、インフラでは、はるかに安価に、可能です。 ●「世界中の、卸と配送中(物流)も含めた店頭在庫や、日々の販売実績を、全アイテム、しかも一個ごとに、リアルタイムで把握する。当然に付属部品も」です。無線LANとインターネットの時代は、これができる。 日本も、今からでも、決して遅くはない。アップルの「グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)」に類したシステムを、作ることです。そうすれば、10年後にはアップルの上を行けるでしょう。GDPも成長します。
生産性が上がって、世帯の所得も増える。 肝心なのは、自社にとっては外部である店頭の在庫と販売データの、リアルタイムネットワークです。これは中小企業、大企業に関係はない。全企業は、サプライ・チェーンの一環だからです。 (注)わが国での障害は、店舗の在庫と販売データが、卸、メーカーに分からないことです。分かっても、まだ一部の店舗です。データ利用で全体を推測するための、サンプリング統計的な工夫が要ります。 しかしわが国小売業の中にも、ウォルマート流のCPFR(共同商品計画・予測・発注)を行うために、アイテム毎の販売データと在庫データを公開しているところも増えています。 今のまま、アップルのGDVに類するシステムが作れないと、日本の製品大メーカーは、これからもずっと、アップル・P&G・シスコシステム・ウォルマート・デル等に、コストと販売数で負け続けます。 同種のシステムをもつアマゾンやグーグルにも、でしょう。これも、確定的に言えるのです。
情報化時代は、適量生産、適量在庫、および販売に「有効な情報」が価値をもたらす時代です。製品の品質、部品精度の高度さだけではない。それらは必要条件であって、成長の十分条件ではない。
次稿では、サプライ・チェーンの、技術的な面を取り上げます。店頭での販売予測と最適在庫からです。サプライ・チェーンは、需要起点でなければならない。 今回、改めてサプライ・チェーンを考えてみて、日本の産業の再興の鍵が見つかった気がし、少し嬉しい。鍵を見つければ、後は実行だからです。
と思った部分がありましたので、いつものように下記に転載するのですが
ここ20年間日本が低迷している原因のひとつを分かりやすく
生産現場からみた考察をしています。
この人は本当に頭の良い方だと思いますわ。難しいことを分かりやすく文章で表すのはかなりの能力が必要ですねぇ。それを秀さんのようなアホにも噛み砕いて話をしてくれるので助かりますわ。
しかし・・・最近ベトナムの話題はないわ、転載記事ばかりで手を抜いているなぁ
と少しは反省しております。すまんこってす!
でもですね、この記事は長いですが非常の為になる記事だと思いますよ。
是非、一読して見てくださいな。
以下転載開始・・・・・・・・・・・
110120 ビジネス知識:後半部より
■4.小売業の大きな失敗の事例 【Kマートの誤り】
1980年代まで、破竹の勢いで利益を出し店舗数を増やして、世界ナンバーワンになっていたKマート(年商4兆円)で起こったことも、失敗工場の事例と同じです。
1980年代はウォルマートが登場しました。店舗数と売上でトップを走るKマートも、ウォルマートの店舗の15%と低い店舗コスト(設備関連費+人件費+在庫コスト)に、対抗せねばならなかった。
商品戦略として、Kマートのバイヤーは、仕入れ価格を下げるため、以下のような大量仕入を行ったのです。 「このPB商品は、今、1回で平均1万個の発注なので、300円で卸しています。2万個の発注を戴くと、工場がフル稼働しトラックも満車で、お宅の倉庫(DC)に、運ぶことができます。このため、250円で卸すことができます。御社の店頭価格は400円です。御社の粗利益率は、今25%(100円)ですが、これが37.5%(150円)に上がるでしょう・・・」
利益に苦しんでいたバイヤーは、ベンダーから提案があった二万個の大量発注を受け入れます。
このため倉庫には、KマートのPB商品(ブルー・レイと言った)が満載されます。
当然に、店頭にも、大量陳列がされます。 事実、1990年代のKマートのメイン通路には、安く大量仕入されたPB商品が、いつも天井まで満載されていました。売り場の品目数は少なく、明らかに、行き過ぎでした。
●小売業の損益計算でも、在庫は経費ではない。売れ残った在庫がどんなに膨らんでも、経費ではない。そのため、原価の低い商品を安く仕入れれば、倉庫と店頭で30%が売れ残っても、上記で言えば売れた分が売れたと仮想した、37.5%の粗利益があるように見えるのです。(商業簿記の欠陥)
▼店舗の、キャッシュ・フローの利益と、商業簿記の利益の違い 本当の利益計算は、以下のように、キャッシュ・フローで見なければならない。
時系列で見ます。250円で仕入れたものを2万個、400円で売る予定ですから、見込みの粗利益率は[150円(値入額)÷売価400円=37.5%]です。 (注)キャッシュ・フローでは、売上収入と、仕入および経費を現金で計算します。
商業簿記では、仕入で増えた在庫は経費でなく(資産勘定であり)、売れた分の仕入原価だけが、経費になります。
このため商品在庫が増えても、利益が出たように見えるのです。
工業簿記での部品在庫も、生産に使われたとき初めて製造原価に入れます。
部品在庫が増えても、経費にはならない。
(1)2万個の仕入時点=250円×2万個の在庫=500万円の赤字 売上はまだないので、仕入原価500万円が費用になります。
(2)店舗で5000個売れた時点での、キャッシュ・フロー利益 =売上(400円×0.5万個)×0.375−在庫250円×1.5万個 =実現粗利益75万円−375万円の在庫 =300万円の赤字 (注)1ヶ月で5000個売れると、在庫が1.5万個残っていても、商業簿記では[売上200万円×粗利益率37.5%=75万円]の粗利益額が生じたように計算されます。
キャッフローでは300万円の赤字でも、店舗の損益計算では利益が出たように見える錯覚が起こるのです。
担当バイヤーは、つかの間の喜びを味わうかもしれません。2万個の大量発注で、25%だった粗利益率が37.5%に上がって、最初の1ヶ月は「よくやった、利益が改善した」と経営者もバイヤーも喜ぶからです。他のバイヤーも見習って、大量仕入に奔走するでしょう。これが90年代のKマートでした。漫画のようです。 ・・・・・・以下1部省略します。
( ●バイヤーや工場長(あるいは部門管理者)は、会社が情報システムを作って、在庫や不稼働のコストを含むキャッシュ・フローで損益を計算し、それを業務責任にする管理の仕組みを作っておかないと、量産工場やKマートのような誤りが、どの会社でも生じるでしょう。 【ついに破産】こうしたことを繰り返し、MBAのエリートが多く勤め、当時は世界最大のKマートは、2002年に倒産します。今は、シアーズに併合されています。Kマートの、本部が作る経営計画書はすばらしかった。それを実行する現場業務がダメだったのです。
●世界最大の自動車会社GMの倒産も、実は、販売が50%に急減したリーマンショック以後も、「工場での1台あたり製造原価を下げるため作りすぎた車の販促費と、大きな割引販売の負担」から、巨額赤字を出したことです。 GMの倒産前の粗利益は、販促費と割引の増加のため、ほぼ5%しかなかった。壮大な誤りを行った。(注)普通、自動車の粗利益は15%はあります。
以上のように説明すれば、「わかりきった失敗だ。」と誰もが思うでしょう。しかし、部門が複雑な、巨大エリート企業で実際に起こったことです。 今日も、「工業簿記と商業簿記がもっている、経費と期間利益計算の欠陥」に気がつかないと、実際にあちこちで起こっているでしょう。
【ロジスティクス】
●サプライ・チェーンのコストダウンの鍵は、リードタイムを短くした最適ロジスティスになります。サプライ・チェーンの具体型は、ロジスティクスと言ってもいい。
DELLの生産システムは、受注後に、アジアで1週間で組み立てる、ロジスティクス型生産です。「生産期間で1週間」というのは、今の全競争の、キーポイントかも知れません。 良く利用するアマゾンも、ゴルフ・ダイジェスト・オンラインも、インターネットでの注文後、ほぼ翌日に届くようにロジスティクスが短縮化しています。サプライ・チェーンが、できているからです。
■5.スルー・プット会計は、キャッシュ・フロー会計 サプライ・チェーンでは、伝統的な損益ではなく、キャッシュ・フロー計算したものを、利益とします。 これを、イスラエル人のエリアフ・ゴールドラットは、2000年ころにベストセラーになった『ザ・ゴール』で、敢えてわかりににく「スルー・プット会計」、つまり、「出力(=売上)と入力(仕入と経費)の差を計る会計と言っています。 (注)スルー・プットは、コンピュータにデータを入力し、プログラムで加工され、目的の出力データを出すまでの時間です。短いほど、高性能になる。 「ザ・ゴール(唯一の管理目標)」は、キャッシュ・フローの利益です。
ここから、工場の各工程を、最終販売に同調させる「制約理論(例えは、むかで競争)」という、工程管理の方法を導いています。 ゴールドラットは、1990年代に、(1)一貫スルー・プット会計の方法と、(2)原材料から販売の流通までを含む、異なる企業の、全工程の生産・仕入・在庫を同調させる「制約理論」を日本が知れば、競争する米欧の産業にとって、困ったことが起こると考えます。 (注)実は工業簿記や商業簿記が原価計算や利益計算では、経費と資産科目があり、税法も絡んで複雑です。現金の動きのキャッシュ・フロー会計は、スルー・プット会計と難しく言っても、内容は単純です。骨子は、収入と支出の家計簿だからです。貸借対照表は別になりますが・・・ この一貫サプライ・チェーンの方法を知れば、もともと80年代に、トヨタ式生産やタンピン管理という伝統的な[工場内サプライ・チェーン、店舗内サプライ・チェーン]の素地をもつ日本が、世界を征服するだろう。これは避ける。ゴールドラットは、そう考えていたのです。 (注)両社は、工場内や店舗内の、伝統的で「部分的なサプライ・チェーン」と言えるでしょう。
ここに問題があった。この解消が、両社を成長させるでしょう。小売業では、ウォルマートモデルです。
(1)トヨタでは、部品産業と膨大な下請け会社、
(2)IY堂とセブン・イレブンでは、卸と工場を含むコストを最小化するサプライ・チェーンが、あまり考慮されなかったからです。
これらが、原材料から製品の最終販売までの多段階を一貫するサプライ・チェーンの方法を知れば、怖いことになると、彼は考えます。 そのためゴールドラットは、日本企業が十分に弱って、(1)新たな「設備投資」と、(2)一貫サプライ・チェーンの構築のための「情報システム投資」を減らした2000年代にしか、日本語への翻訳を許さないとしていました。
日本の産業は、1980年代までは、設備投資が世界最高でした。これが、人的生産性を上げていました。 しかし1990年から現在に至るまで、日本企業の平均生産性は伸びるどころか、逆に減っています。このため1997年からは、世帯の平均所得は20%も減っています。年収400万円以下の世帯が、急増しています。 (注)1996年の平均世帯所得(平均家族2.6人)は661万円でした。2010年は推計で、530万円です。131万円(20%)も減っています。(国民生活基礎調査:厚労省) 若干大げさですが、2000年代の10年の事実を見れば、ゴールドラットが予想していたことが、首肯できます。
売上予想(または受注)、仕入、在庫、販売を最適に連鎖させるサプライ・チェーンでは、情報システムで、発注システムと在庫管理システムを作ればいいというのではない。(1)スルー・プット会計の方法が加わり、(2)管理方法の変革がなければならない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(1)業務の活動と、(2)部門のキャッシュ・フロー管理の仕組み作りが同時に必要で、(3)原材料・部品の源流から最終販売の、一貫性が必要です。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【身近に知ったキャッシュ・フロー経営】1月3日は、誘われて、初打ちでした。約10人の、クリーン・ルームの空調設備を設置するための、配管を作る工場をもつ経営者と一緒でした。帰りの車の中で、彼が言っていた。 「今はCADでの設計ですから、設計すれば、機械は自動的に動きます。CADの技術革新について行くのは、実に大変です。でも自分は多分臆病なので、入った売上と、「給料+経費+材料仕入」を払った後に、残ったお金の計算しか、信用しなかった。90%は頭に入っています。今月600万円が残れば、それを自分の所得と考えた。借金は怖いので、銀行が奨めても、必要最小限しかしませんでした。そのため、今も、吹けば飛ぶような零細企業です。周囲には、儲かると思い、借金で、不景気のときは過剰になる設備投資をし、潰れたところだらけです。」 (注)CAD:コンピュータ支援設計 これが、サプライチェ−ンが言う「素朴なキャッシュ・フロー経営」です。タンピンの管理の原型を作ったIY堂の会長、伊藤雅俊氏も似ています。 素朴(=単純)さが、いつも時代を拓く。経営法で、複雑なものは消えます。シアーズの企業再生戦略は、論理的にはよくできていたのですが、戦略要素が多岐にわたり、実に複雑でした。このため、現場は実行ができなかった。 【伊藤雅俊会長】「いちばん怖いのは、会社が大きくなって、バイヤーが在庫を怖がらないことです。そのためうちでは、売れたものをバラで仕入れるタンピン・カンリと、死に筋カットにした。」 実際に会いタンピン・カンリという発音を側で聞くと、懐かしい感じがしたのを憶えています。 (注)前述したように、ベンダーへの発注頻度を過度に増やし、入荷サイクルを短縮化することが多いタンピン・カンリには、・店舗の商品作業量と、・ベンダーの在庫、および納品コストを増やすという欠陥があります。生産コストも上げます。 営業利益を基準にみれば、店舗の商品作業を減らす最適な発注頻度と最適在庫がある。最近の経営で良く使われ最適(オプティマム)は、営業利益を最大化する商品作業と在庫を言います。 ●若干難しいのですが、これが、EOQ(経済発注量:Economical Ordering Quantity)の公式です。 (注)EOQ(ある部門の経済発注量)=[2×一定期間の売上予測数×(発注ロット当たりの商品作業費+ロット当たりの配送費を含む原価低下額)}÷{(発注ロット当たりの在庫コスト率%+ロット当たりの在庫リスクコスト率%)×仕入原価}]の平方根です。 この実際の計算法と利用は、事例を出し、雑誌『販売革新』(2008年6月と7月号)に、詳細に書いています。まだ利用はされていないでしょうね。この在庫管理シリーズは、12回分、連載しています。 このEOQの実現型が、店頭や卸の「売れ数予測に比例する在庫(=売れ数比例在庫)と最適発注頻度」です。これは、店舗におけるサプライ・チェーンの目標になるものです。 IY堂やセブン・イレブンも店舗のタンピン・カンリだけは、サプライ・チェーン全体(製造・卸・小売)の総コストと在庫を、最小化するスルー・プット会計ではない。 発注頻度を増やすタンピン・カンリだけでは、卸と製造の在庫、生産、物流コストを上げることがあるからです。 また、トヨタ式生産も、工場内では受注生産のサプライ・チェーンであっても、下請けの部品業者の見込み在庫と、即納のためのコストを増やしていることが多い。 生産と流通の一貫サプライ・チェーンとして、完全とは言えません。このため、2010年は、サプライ・チェーンの世界25位のランクにも入っていません。 下請けを含むCPFR(共同商品計画・予測・補充)に、不十分な点があったからです。以上を、哀しみます。
■6.ハイ・ブリッド化した製品の原価は、販売量が増えると加速度的に下がる ハイ・ブリッド(原義は混血・雑種)は、車ではガソリン・エンジン(内燃機関)と電機モーターの複合エンジンの車を言います。 一般的な意味では、「機能の複合化」を言います。今、電子製品に限らず、ほぼあらゆる商品が、複合化されています。 【価格が高い炊飯器】例えば、以前は電熱器のように単純だった炊飯器です。今は、米を炊きあげる過程での温度や蒸気圧力を、美味しいご飯が炊けるよう最適にコントロールする基本ソフトとアプリケーションが入っています。数万円と高いのですが、これは、研究開発と数百メガバイトのソフト開発のためです。 (注)実は高性能な炊飯器も、1機種の販売台数を10倍に増やせば、製造原価は、利益を上げる販売価格でも1万円付近に向かい下がるでしょう。複製ではゼロのソフト部分のコストが、大きいからです。しかし、お米の炊飯器は、ほぼ国内市場だけで、各メーカーの機種が多い。このため1機種の生産量が少なく、まだ高価格のままです。 掃除機にも、マイクロコインピュータが組み込まれています。車は、駆動系やブレーキ、および空調、ナビゲーション、音響等が、マイクロコンピュータの塊になっています。 次世代携帯電話(i-Phoneやアンドロイド)、i-Pad、i-Pod等は言うまでもない「ハイ・ブリッド製品」です。実に、われわれが使う商品は、多くがハイ・ブリッド化したのです。 音楽や映画の「i-Pod」を例に取ります。ソニーのウォークマンが世界を席巻していた時代(1980年代)は、音楽のソフト産業(カセットテープやCDの製作)と、それを再生するウォークマンは分離していました。 小型・精密・高品質ではあっても、ウォークマンは、過去の機械的な、高い精度の部品を集め、組み立てたものでした。 他方、白く、つるりとして操作ボタンもないi-Podは、日本が得意だった機械的な部品は、ハードディスクや液晶とICだけです。 SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)にすれば、ハードディスクも要らない。完全に、電子とソフト製品になっています。 肝心なのは、音楽ソフトのデータベースです。TVでも今、ネットテレビのApple TV登場しています。映画や番組がデータベース化される。書籍や雑誌も電子化されます。 重点は部品の精度だけではなく「ソフト・ウェア技術」になってしまった。複合化製品のすべてが、ソフト・ウェア技術です。 こうしたハイ・ブリッド化商品でのサプライ・チェーンでは、世界標準化の技術と、プログラミング技術、およびデータベースになっています。 日本の産業が遅れたのは、この点です。「アップルは発注量が1桁、2桁と多いのに(部品価格を)値切らない。国内の完成品メーカーとの交渉では、値下げの話ばかり。」 なぜこうしたことが起こるのか?
●アップルの製品の製造原価では、(1)ソフト・ウェアの開発コストが大きく、(2)機械的な部品が占める原価は、小さいからです。 機械が、ソフト化されたと言っていい。 例えば、あなたが、ほぼ毎日使っているコンピュータのキーボードは、機械的なものです。キーボードは、中国製の安い物は1500円くらいでしょう。 過去(1990年代)は、2万円以上していました。13分の1になった。ここが、2000年代の日本産業が、苦境に陥った根底です。 機械的な品質と耐久性がいい「モノ」を作っても、中国製のはるかに安いものと、「商品価値」での競争をしなければならない。商品価値=機能・品質÷価格です。13倍高い日本製のキーボードに、中国製の1500円の13倍の商品価値を認める顧客が、何人いるか? 極めて少ないでしょう。 (注)当方、キーボードを、力を込め激しく叩く時間が長いので、2万円の『RealForce106』という重い日本製を使っていますが、少数派でしょう。1500円ものは、数ヶ月で何度も壊れたからです。 アップルが部品メーカーに、発注が2桁増えても値下げを強くは要求しない理由は、製品の製造原価の中で、機械的な部品の占める割合が低いためです。一方で、ソフト・ウェアの開発コストは高い。 しかしソフト・ウェアは一個を開発すれば、無償で複製ができます。i-Podの開発に500億円のコスト(人件費)がかかっても、1億台売れば,1台あたりのソフト・コストは1億円分の1に下がり、500円です。2億台売れば、250円に下がる。 機械的な部品が多いものでは、最終製品の製造台数を2倍に増やしても、製造原価は10%も下がらないかもしれません。1/2のコストに下がることは、絶対にない。
●日本の産業が、例えばアップルに負けたのは、2000年代に進行した製品の原価構造の違いがあります。このため、アップルは機械的な部品の割引を強く要求しない。原価構成要素で、小さいからです。 世界の66億人市場で売るアップルのi-Pod、i-Pad、i-Phoneは、生産台数の桁が違います。 ソフト・コストの部分が多いので、1機種で売れる数が増えれば増えるほど、累乗的に利益は大きくなる。しかも、アップルの製品アイテム数は、100機種以下ではないかと思えるくらい少ない。初期生産は、顧客を1ヶ月も待たせるくらい、生産量は少ない。ムダのない生産システムです。
●他方、日本のメーカーは、1アイテムでは、少量しか売れない季節毎の新商品が多く、そのたびに設計を変え、金型をつくって、異なる部品を作り、組み立てています。 2000年代の、製造原価でソフト部分が増えた製品のハイ・ブリッド化に遅れたのです。
■7.アップルのグローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV) 「配送中も含めた店頭在庫や、日々の販売実績を、全アイテム、しかも一個ごとに把握している。当然に付属部品も。」 これがアップルのグローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)です。
●全店頭での在庫と販売予測から、1アイテム毎の生産計画を作り、その生産計画に基づいて、サプライ・チェーンの会社に、展開した部品やソフトを発注する。(注)CPFRによるMRP=部品要求プログラム:CPFR(共同商品計画、予測、補充) 日本のメーカーで、(1)世界の全店頭の在庫まで、一個ずつ把握し、(2)今日の店頭販売結果(POSデータ)をリアルタイムでつかんで、(3)その販売予測から、工場での生産計画と必要部品の発注を行っているメーカー(または販社、卸)が、あるでしょうか? あればご教授ください。その会社の業績は、急進しているはずです。
1990年代の後期に、米国のサプライ・チェーンのソフトのベンダーを訪ねたとき、「グローバル・ロジスティクス・システム(世界調達・在庫・販売管理システム)」と言い、数億円で売っていました。導入費用は、それ以上にかかっていましたが・・・今はもっと安いでしょう。 確かEXEテクノロジー社と言った。ラスベガスでのセミナーとその後の歓迎パーティに出席したのは、日本人では、NTTから数人のマネジャーと、当方のグループ2名でした。こうしたシステムを、今から作らないと、日本はダメになるのではないかと感じたのです。
(注)今、EXE社があるかどうかインターネットで調べても不明です。別の会社になっているかも知れません。日本支社長を知っていたので、EXEで、見込み客を前に講演したことがあります。 マイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマーがゲストスピーカーでした。アジアでは、ターバンを巻いたインド人と中国人が多かった。中国人と韓国人は、社員になっていました。 こうしたことが、今の中国と韓国産業(サムスンやLG)の、ロジスティクス・システムを作っています。韓国のLG電子が、ロジスティクスのシステムを模索していたのは、2000年代初頭でした。
経営者向けの講演依頼があったので記憶しています。(注)実行はしませんでしたが。 10年前です。国内のサプライ・チェーンもまだなのに、世界のコスト最適地から部品を調達し、製品は世界に販売する「グローバル・ロジスティクス・システム」は、時期が早いなとも思っていました。
しかし米国の、少なくとも(1)アップル、(2)P&G、(3)シスコシステム、(4)ウォルマート、(5)デルは、「グローバル・ロジスティクス・システム」に匹敵し、あるいは上回るシステムを構築しつつあったのです。 情報システムが利益になって稼働するには、数年の期間がかかります。今が、10年前の準備の華(大きな利益)でしょう。事業経営の戦略では、数年〜5年に渡る長期的な視野が必要です。
●情報とネットワークのシステムは、一夜で変えることができても、業務は人間が行い、販売網(販売店)の構築には数年の時間を要し、イノベーションの発現には時間がかかるからです。 組織と組織管理の方法も、変更しなければならない。スルー・プット会計も、です。そして、システムや設備投資は、導入当初は損失になって、利益が出ない。 (注)米国製造業の全体は衰微しましたが、日本の産業を超えるロジスティクス技術をもつ、世界的な成長企業群はあった。サプライ・チェーンの根幹の業務は、ロジスティクス(営業利益に対する最適発注量と最適物流量)です。 バブル崩壊期(1990年代〜2000年代初頭)の日本は、設備投資と情報システム投資を減らして抑制していました。 このため、事務計算のコボル等を使うメインフレームの、レガシー(古風)なシステムになっていた。1990年代は、NTTの規制のため、無線LANもなかった。これではムリです。今は、インフラでは、はるかに安価に、可能です。 ●「世界中の、卸と配送中(物流)も含めた店頭在庫や、日々の販売実績を、全アイテム、しかも一個ごとに、リアルタイムで把握する。当然に付属部品も」です。無線LANとインターネットの時代は、これができる。 日本も、今からでも、決して遅くはない。アップルの「グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)」に類したシステムを、作ることです。そうすれば、10年後にはアップルの上を行けるでしょう。GDPも成長します。
生産性が上がって、世帯の所得も増える。 肝心なのは、自社にとっては外部である店頭の在庫と販売データの、リアルタイムネットワークです。これは中小企業、大企業に関係はない。全企業は、サプライ・チェーンの一環だからです。 (注)わが国での障害は、店舗の在庫と販売データが、卸、メーカーに分からないことです。分かっても、まだ一部の店舗です。データ利用で全体を推測するための、サンプリング統計的な工夫が要ります。 しかしわが国小売業の中にも、ウォルマート流のCPFR(共同商品計画・予測・発注)を行うために、アイテム毎の販売データと在庫データを公開しているところも増えています。 今のまま、アップルのGDVに類するシステムが作れないと、日本の製品大メーカーは、これからもずっと、アップル・P&G・シスコシステム・ウォルマート・デル等に、コストと販売数で負け続けます。 同種のシステムをもつアマゾンやグーグルにも、でしょう。これも、確定的に言えるのです。
情報化時代は、適量生産、適量在庫、および販売に「有効な情報」が価値をもたらす時代です。製品の品質、部品精度の高度さだけではない。それらは必要条件であって、成長の十分条件ではない。
次稿では、サプライ・チェーンの、技術的な面を取り上げます。店頭での販売予測と最適在庫からです。サプライ・チェーンは、需要起点でなければならない。 今回、改めてサプライ・チェーンを考えてみて、日本の産業の再興の鍵が見つかった気がし、少し嬉しい。鍵を見つければ、後は実行だからです。
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